
JR西日本が27日朝、運転士らへの出発前検査でアルコールが検出されたとして、山陽新幹線の一部区間を運休したが、その後の調査で「誤検知」である可能性が高いことが分かった。交通機関の乗務員へのアルコール誤検知を巡っては、過去にバス会社で運転手が自殺するという悲劇も起きている。当時、遺族側の代理人を務めた弁護士は「安全のためにチェックすることはとても重要だが、今の技術では誤検知は避けられない。会社側も世の中も、誤検知があるという前提に立つ必要がある」と警鐘を鳴らす。
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出発前検査でアルコールが検出されたのは、新岩国発新大阪行きの山陽新幹線こだま838号に乗り込む予定だった男性運転士と女性車掌。新岩国駅でおこなった呼気による検査でアルコールが検出されたが、代わりになる人員がいなかったため、新岩国―広島間の運転を取りやめた。
ただ、2人とも「酒は飲んでいない」と話したため調査した結果、検知器を保管していたロッカーで消毒用アルコールの液体が漏れており、それを検知した可能性が高いことが分かった。JR西は当初、アルコール検出の事実と運休について発表していたが、改めて誤検知の可能性について公表した。
当初のアルコール検出の報道に対しネット上では、「自覚が足りない」などと2人の飲酒を厳しく問う書き込みも目立ったが、誤検知の可能性が報じられると「疑いが晴れて良かった」などと当事者を気遣うコメントが増え、JR西の早い対応を評価する声もあった。
公共交通機関が乗務員へのアルコール検査を行なうことは安全管理上、当然のこと。だが、過去には誤検知を巡る悲劇も起きている。
2008年、都内のバス会社で、当時51歳の男性運転手への飲酒検査で2度にわたりアルコールが検出された。上司らから飲酒を疑われて厳しい調査を受け、解雇されてしまうと思い込んだ男性は、「検査が怖くてたまらない」との遺書を書き、妻と子どもを残して自殺した。