──思い出に残るコンサートがありすぎますね。7月末に出版された『洋楽ロック史を彩るライヴ伝説 ウドー音楽事務所の軌跡を辿る』(シンコーミュージック・エンタテイメント)にある招聘リストも64ページにわたって全公演が書かれています。

「ボブ・ディラン、TOTO、ドゥービー・ブラザーズと、とくに初来日の印象は強烈です。レーナード・スキナードは、初来日した秋に飛行機事故でメンバー数人が亡くなったので、余計に『フリー・バード』のトリプルギターに度肝を抜かれたことが忘れられません」

──エリック・クラプトンといえば高橋さん、とファンに知られるくらい、彼には深い信頼を寄せられています。

「たぶん彼は目立つのが嫌い。ものすごく謙虚で普通の人です。一度、信頼したら、すべてを相手に任せるくらい情も深い。来日した彼がよくアルマーニに通っていたころ、僕も暇だから店内を眺めてるじゃないですか。それをクラプトンはさりげなく見ていて、会計が終わったあと、僕が手に取った物を『タック(高橋さんの愛称)にプレゼント』って渡してくれたんです。相手が喜ぶことをよく見てるんですね。以来、公演の合間に買い物に同行するときは、あまり物に触らないようにしています(笑)」

1974年来日公演時のエリック・クラプトン@Koh Hasebe /Shinko Music Archives
1974年来日公演時のエリック・クラプトン@Koh Hasebe /Shinko Music Archives

──ますますクラプトンが好きになるエピソードですね。

「音楽性、人間性、生き方すべてが素晴らしい人です。とくに印象深い演奏は、75年の武道館公演のときです。彼が楽屋に着いたのは始まる30~40分前。ちょっとコーヒーを飲んで一息つくと、タバコをくわえながらギターを持って上手から舞台に上がっていきました。タバコをギターのヘッドに挟んで、まわりを見渡しながら、ダーンと弾き始めたのが『いとしのレイラ』。お客さんは『わーっ』と総立ちです。体験したことのない圧倒感に鳥肌が立ちました」

■居酒屋の座敷 挨拶したボウイ

──その他に印象が強いアーティストは?

「400ぐらいのアーティストを担当して、1600公演以上は見ていますが、全員、好きです。『嫌なヤツ』と思う人は99%いません。それぞれが哲学を持っていて、違いがわかる人たちです。いろいろな面で勉強させてもらいました。だからこそ、世界に影響を与えるアーティストになれるのだと思います」

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