
翔:うさぎ跳びはない(笑)。俺たちデビュー前は、曲は作れても譜面は書けないし読めなかったんだよ。レコーディングも全部自己流で、何も知らなかった。これじゃダメだということになって地獄のレッスンを始めたわけ。リズムボックスでテンポを決めて、それに合わせてひたすら3コードを延々と大真面目に2時間とか続けるのね。すると、全員がぴったり合う瞬間っていうのがあって、そのときってリズムボックスの音が聞こえなくなるの。たぶんその練習が「地獄」って言われてるんだと思う。
剣:銀蝿サウンドはそうやって生まれたんですね。
翔:そうやって乗り越えた経験ね。コロナ禍の今もそうだよ。ライブ中止にしたり。コロナのバカヤロウって思うけど、これも乗り越えなきゃね。
剣:俺らも武道館公演は人数制限をしました。
翔:Johnnyが横浜銀蝿40thでバンドに戻ってくれて、1年でやめてカッコつけたかったんだけど、コロナでライブが延期になったから、まだ続けてる。
J:バンドに戻ったらやっぱり楽しい。売れる売れないなんて関係なく楽しんだ高校時代に戻ったみたいだった。

翔:本当に楽しいのよ。だから続けてるというのもあるけど、コロナだよ。このコロナ禍をどう生きたかで男の価値が決まると思うからやめられない。
剣:銀蝿さんの名言で「有言実行!」っていうのが俺は好きなんです。いろんなことがあるけど、まずは宣言してオトシマエをつけていく。男の美学ですよね。
翔:マスクをして、距離を保ち、声を出さないとか。それでも聴きに来てくれるファンに会いたいから、前に進むわけだよね。
剣:そうですね。
翔:俺はね、デビュー当時には周りの歌手やミュージシャンはみんな敵だと思ってた。「負けねぇぞ!」って。でも年齢がいってそうじゃなくなった。お互いの音楽を認め合って、剣ちゃんとのように男の付き合いができるようになった。そういうゆとりや優しさに男のカッコよさがある。剣ちゃんもきっと昔と考え方が違ってきた面があるだろ?
剣:ありますよ。俺は若いときはカッコよく散るのがいいと考えていたけど、今は現役でいること、力尽きるまで続けることが男らしさだと思います。
翔:それだよなぁ。
(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2021年10月8日号