■コンバージョン手術で生命予後が50%延長
最近では切除不能と診断されても、化学療法や化学放射線療法の効果により手術が可能になる事例も増えている。このような手術をコンバージョン手術(治療方法を変更しておこなう手術)という。
化学療法をしながら定期的に検査をし、コンバージョン手術の可能性を探っていく。コンバージョン手術は、腫瘍マーカーの低下や腫瘍が縮小して血管から離れるなど治療の効果、遠隔転移の有無、患者の年齢や栄養状態を含め、総合的に慎重に評価、検討した上で選択される。
「数年前まで、手術ができない膵がんは非常に厳しい状況でした。しかしこの4、5年は新しい薬剤も開発され、化学療法の効果が出て手術ができるようになる人も増えています。コンバージョン手術を受けた患者は生命予後が50%程度延びるというデータもあるので、諦めずに専門医のいる病院に行ってほしいと思います」(藤井医師)
コンバージョン手術後には、再発を抑えるための化学療法がおこなわれる。
「手術で腫瘍を取っても、すでに微小な転移が肝臓などにあって再発することも多く、手術前後の化学療法はとても大切です。手術も含め治療期間が長くなるので、患者さんには体力をつけるため、しっかり食事を取ることやからだを動かすことを強く勧めています。からだが弱ってしまうと大きな手術や化学療法に耐えられません」(永川医師)
コンバージョン手術が難しい場合には、化学療法の継続や症状を緩和する治療などがおこなわれる。
ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/
【医師との会話に役立つキーワード】
《切除可能性分類》
手術ができるかどうかを判断基準とした、膵がんの進行度を表す分類の一つ。「切除可能」「切除可能境界」「切除不能(局所進行)」「切除不能(遠隔転移あり)」の四つがある。主要血管浸潤があると切除不能(局所進行)になる。
《主要血管浸潤》
膵臓の周囲に集まっている、肝動脈や腹腔動脈、上腸間膜動脈など、生命を維持するために重要な血管にがんが広がっていることを言う。がんが血管の近くにあったり血管を巻き込んでいたりすると、手術が困難なため切除不能となる。
【取材した医師】
東京医科大学病院 消化器・小児外科学分野准教授 永川裕一 医師
富山大学病院 消化器・腫瘍・総合外科教授 膵臓・胆道センター長 藤井 努医師
(文/梶葉子)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より