
1930年代、2歳で子役としてデビュー、日本の芸能界の歴史を知り尽くす中村メイコさん。現在は大きな家を引き払い、モノをごっそり捨て、夫の神津善行さんとスッキリ暮らしているそう。作家・林真理子さんとの対談では、新婚時代の思い出や著名人たちとの交流を明かしてくれました。
【中村メイコ 親友・美空ひばりの手紙、腕時計は捨てられず…「お棺の中に入れて」】より続く
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林:私、大切な本はなかなか捨てられなくて、メイコさんの『メイコめい伝』という本もずっと持ってまして、今日お目にかかるんで持ってきたんです。
中村:うわっ、なつかしい。私、もう持ってませんよ。
林:これは今から40年ぐらい前に「週刊朝日」で連載されたエッセーをまとめた本ですけど、この中に「今だから話せる」的なお話がいっぱいあって、実はメイコさん、政治の世界に誘われたんですよね。夜、呼ばれて中曽根(康弘)さんたちに囲まれて、「参議院選挙に立候補してほしい」って。
中村:口説かれたんですけれど、「私、なんにもわかんないもん」ってお断りしたんです。
林:でも、話の切り返しはうまいし、頭の回転は速いし……。
中村:絶対ダメだと思いますよ、私。カンナ(長女・作家)があきれてます。「あなた、よく八十何歳までその知識で生きてきたね」って(笑)。
林:いやいや、そんなことはないでしょうけど。
中村:私、2歳のころから子役をやってたから、常識と言われることを何も知らなかったのよ。それで新婚のころ、神津さんに「おみそ汁の具は何にしたらよろしいですか?」って聞いたら、「ワカメか何かでいいよ」って言われたんだけど、ワカメがどこで売っているのかわからなくて。そのころはまだスーパーなんかなかったし、海のものだから魚屋さんかなと思って、魚屋さんで「ワカメありますか?」って聞いたら、「うちは魚屋だからワカメはねえよ。ワカメは乾物屋かな」って言われて。