林:私、昔、吉行さんに銀座のバーで一回お会いしましたけど、カッコよかったです。吉行さんから手紙をもらったんですよね。ラブレターですか。

中村:そこが吉行さんの頭のいいところで、「メイコ」とも「親愛なる」とも書いてないのに、私にはラブレターに思えました。

林:すてき。封筒に便箋ですか。

中村:「吉行淳之介」って名前が入った原稿用紙でした。

林:それは捨ててないですよね、さすがに。

中村:カンナにあげました。「あんた物書きなんだから、お守り代わりに持ってなさい」って。

林:三島由紀夫さんともおつき合いがあったんですよね。カンナさんは三島由紀夫さんに詩を見てもらったんでしょう?

中村:そうなんです。「噴水さん、噴水さん、あなたはどうしていつも飛び上がっていて、疲れないの? カンナがお空だったら、つり革をぶら下げてあげるのに」という詩でした。三島さん、詩を読んで涙をぽたぽたこぼし始めて、「いい詩だね。おじさんも今、つり革がほしいんだ」とおっしゃって、それから3日後ぐらいにあの事件(自衛隊市ケ谷駐屯地突入事件)が起きたんです。ああ……と思いました。何かにつかまりたかったんでしょうね。

林:すごい話……。メイコさんは森繁久彌さんとも親しくて、森繁さん、メイコさんのお尻をさわったって本当ですか。

中村:ハハハハ、しょっちゅうでしたよ。でも、「メイコのお尻に最初にさわったのは俺だぞ」と言った人がいて、池部良って俳優がいたでしょ。私が小さいころ、あの大二枚目が私のおんぶ係だったんですよ。はじめ池部さんは東宝の文芸部で使い走りをしてらして、それから役者になったんですけど、「メイコちゃん、第4ステージだよ」とか言われて、ちょっと遠いと、私が「おんぶ」って言うんですって。それでおんぶして連れていってくれたんです。

林:池部さんにもここ(※「週刊朝日」連載「マリコのゲストコレクション」)に出ていただきましたけど、まあカッコいいこと。80歳過ぎてらしたけど、ほんとにすてきな方でした。黒柳徹子さんとも仲良しなんですよね。

次のページ