
ジョニー・デップ主演の映画「MINAMATA‐ミナマタ‐」で、ヒロインに抜擢された美波さんが、演じたご本人アイリーン・美緒子・スミスさんとオンラインで語り合った。AERA 2021年10月4日号から。
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アイリーン:ユージン・スミスと水俣については、実は、これまで2度ほど映画化の話があったのですが、実現しなかったので、今回も1~2%ぐらいの可能性だと思っていました。でも、ジョニー・デップさんがユージンを演じたいと話していると聞いた瞬間、実現すると確信したんです。不安はありましたが、多くの人に水俣のことやユージンのことを知っていただく、大きなチャンスだと思いました。
美波:アイリーンさんは長く水俣と関わってこられました。
アイリーン:私にとって水俣は第2の故郷であり、大人の私を形成してくれた場所と人々です。水俣の患者さんと一連の出来事は大切であり、ユージンも大切。ユージンと私がどうやって仕事をしたかも大切な思い出です。水俣病の問題は今も終わっていません。映画化に当たって私がすべきことは、知っていることを正確にお伝えし、アンドリュー・レヴィタス監督の質問にきちんと答えることでした。責任をすごく重く感じましたね。
美波:私がオーディションでアイリーンさんの役に決まるまで、1カ月くらいかかりました。フレンチアクセントがなかなか抜けない苦労もありましたが、できることは全部やったので、「これで受からなかったら仕方がない」と思っていました。決まった時はすごくうれしかったんですが、同時に途方もないところに向かっているのではという漠然とした怖さもありました。「進むしかない」という気持ちで撮影現場のセルビア共和国に行ったことを覚えています。後々ですが、ニューヨークのユージンの自宅へ向かった時のアイリーンさんと、その時の私の気持ちはもしかしたら少し近かったかもしれない、と思いました。
アイリーン:美波さんと最初にお会いしたのは、セルビアの撮影現場でしたね。
美波:あの時はすでに役を作っていたので、ご本人とお話しすることで私自身がブレてしまうのがすごく怖かったんです。演じるにあたっては、ご本人を真似た方がいいのか悩みましたが、私には伝えるべきメッセージや、アイリーンさんが担っているものを表現しなくてはいけないという使命があったので、結局、似せることはしませんでした。