「うちのお店はアルコールも普通に出していますが、ノンアルを飲む人が少しずつですが、増えていますね。最初は半々でしたが、今は7割弱です」
と桜井さんは社会の変化を感じているという。欧米でいうローアルコールのお店と銘打っているので、お酒をやめたいという相談もあるそうだ。その相談に桜井さんは、
「お酒をやめるべきだとは言いません。自分がやめてどうだったかや、やめたメリットについてお話しします。他人に強要されるのではなく自分で決めないと続きませんから」
とのこと。その話を聞き、ノンアル生活を始めた人もいるそうだ。
「お酒をやめられない原因の一つは、おいしいノンアルあるいはローアルコールの飲料が少ないからだと思います」と桜井さん。
お酒を長く飲んできた人は、お酒の味になじんでいるし、そのおいしさもよくわかっている。いざノンアル生活にとなっても、お酒と同じような味わいのものがあればいいのだが、日本はローアルコール飲料が発展途上にあるため、選択肢が少ない。それが二の足を踏む原因ではないかと桜井さんは分析する。
「うちの店に限らず“おいしいノンアル”を出すお店が増えているのはいい傾向だと思います」
お店に客として来ていたバリスタの男性がコーヒーを例にこんな説明をしてくれた。
「コーヒーからカフェインを抜いたデカフェがあるじゃないですか。デカフェが出始めたころはおいしいといえるものが少なかったのですが、世の中のニーズが増え技術が向上し、おいしいものが増えました」
さらに続けて、
「日本ではビールをつくり、そこからアルコールだけを抜くという製法のノンアルビールがまだ少ない。需要が増えれば、デカフェ同様おいしいものが増えてくると思います」
そう期待を寄せた。
今後、おいしいノンアル、ローアルコールのドリンクが充実し、選択肢が増えれば、ソバーキュリアスの未来はもっと明るいだろう。(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2022年11月25日号