「たとえば『女性らしくした方がいいよ』など、いじりではなく本心からの助言が押しつけになりセクハラに繋がる『アドバイス型セクハラ』。言う側はセクハラとの自覚がありません。また行為のセクハラは職場の関係内で起きるから懲戒処分で済んだりしますが、外で面識のない人に同じ行為をしたら性犯罪でしょ、というものも少なくない。『職場だから許されると甘えない』。これも大事です」
では、企業側は何をすべきか。セクハラ防止を明記した法律は、1999年に施行された「改正男女雇用機会均等法」がある。「女性労働者に対するセクハラ防止のための配慮義務」を定めたが、2007年には「男女労働者に対するセクハラ防止の措置義務」と改正された。
「17年には『マタニティーハラスメント防止の措置義務』が追加され、さらに20年にはパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行されました。同法の中では、セクハラに関わる部分も強化されたんです」
一つは、「フリーランス」「取引先の従業員」「就活生」に対しても「自社の従業員と同等程度のハラスメント対策をするのが望ましい」と明記された点。もう一つは、性的少数者に対するハラスメント(ソジハラ)の防止も定められたことだ。
「性的指向などを本人の許可なく暴露する『アウティング』の防止が明記されました。『あの人、実はゲイなんだって』などのソジハラは大きく言えばセクハラの中に含まれる。個を尊重する意識を持つこと、性別にとらわれないことも、セクハラ防止のためには重要です」
■義務化するべき
ただ、法制度にも足りない点はあると村嵜さんは指摘する。
「自社従業員以外へのハラスメント対策は『望ましい』ではなく義務化すべきですし、企業に罰則がない点も不十分です。ハラスメント対策をとらない悪質企業は従業員の入れ替わりも激しいので、求人広告の掲載禁止なども、企業側の危機感を強めるうえで有効だと思います」
被害が申し立てまで進んだ場合、本人や関係者への聞き取り調査が行われる。男女雇用機会均等法ではそれを理由とした解雇など「不利益な取り扱い」を禁止しているが、ここにも改善の余地があると村嵜さんは言う。
「『被害者を助けたい』と思っても、自身も仕事を失うリスクを抱える実態が、多々あるんです。たとえば企業側が『不利益取り扱いをしません』とする証明書を作成し、調査対象者に配布する。明確な禁止がそこにあるという大きな説得力につながります。ぜひ推進していきたいです」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2022年11月21日号