
その言葉に背中を押され、和田さんは今から約8年前に食育インストラクターの資格を取った。自分に対する自信づけとともに、仕事や子育てに生かせる知識を学ぶのが目的だった。
「特に勉強になったのは、現代の子どもたちが置かれた五つの『こ食』という食環境や、フードロス、フードマイレージ。食育について学んだことで、こうした社会問題とも向き合うことができました。料理って、単に作って食べて終わりじゃないんだな、食は非常に奥が深いものなんだな、と感じました」
■「こ食」にフードロス
五つの「こ食」の筆頭は、一人で食べる「孤食」。家族でテーブルを囲んでいても、それぞれ別のものを食べる「個食」。自分が好きなものや決まったものしか食べない「固食」。食欲がなく、少ししか食べない「小食」。パンを中心に粉ものに偏る「粉食」だ。最近は、子どもだけで食べる「子食」、濃い味のものばかり食べる「濃食」、朝食抜きで食事リズムを崩し、昼や夜に大量摂取したり、そもそも食べなくなったりする「虚食」なども耳にする。
フードロス(食品ロス)の問題も深刻だ。まだ食べられるのに廃棄される食品は国内で年間522万トン(農林水産省および環境省の20年度推計)。国民1人当たり、お茶碗約1杯分の食べ物が毎日捨てられている。フードマイレージ(食料の輸送量×輸送距離)とは、「食料の輸入が地球環境に与える負荷」を数値化した指標のこと。数値が高いと、温暖化ガス排出などを通じ、地球環境に悪影響を及ぼしている恐れがある。(ジャーナリスト・大西洋平/編集部・中島晶子)
※AERA 2022年11月21日号より抜粋