9月29日、日経平均株価は一時800円超の大幅安に見舞われた。背景のひとつにあるのが、中国不動産大手の恒大集団の経営危機問題だ。歴史的に桁違いの負債額を抱える恒大が倒産ともなれば……。
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コロナ禍の世界経済をけん引してきた中国は、景気が減速し始めた。アジア諸国や日本への影響が懸念されている。
中国は昨夏の不動産融資規制導入で、バブルが最終局面を迎え、不動産会社は危機に直面している。中国当局が支援に動くのか、金融界は固唾(かたず)をのんで見守っている。
広東省広州市で1996年に産声を上げた恒大集団は、大手不動産会社に急成長した。ところが最近、デフォルト(債務不履行)の可能性が高まっていると主要な格付け会社が相次ぎ発表。実際、利払いの一部を延期する一方で、傘下の企業の売却を進めている。恒大の負債総額は6月末で33兆円超。過去最大の企業倒産は米通信会社のワールドコムの約4.7兆円で、恒大が倒産なら桁違い。
「中国では1日に1件ずつ不動産会社が倒産していると言われている」
こう話すのは、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さん。来年は5年に一度の共産党大会があり、「経済の混乱は避けないといけない。すこしずつ資産を売却させるなど、当局がうまく清算にもっていくのではないか」(広木さん)。実際に傘下の地方銀行を1700億円で売却すると発表するなど、資産売却を進めている。
恒大は国内外の投資家から資金を集めるため、社債を発行している。投資家へは定期的な利払いと、元本返済の償還がある。人民元建て債とドル建て債を何本か発行しており、このうち9月23日に利払いを迎えた債券のうち、元建ては支払い、ドル建ては30日の猶予期間があり、支払いを延期している。
ピクテ投信投資顧問ストラテジストの梅沢利文さんは、資産売却が難航しているとみている。今後もドル建て債の利払いが相次ぐほか、「来年はドル建て債が償還になり、桁違いの資金が必要で、容易でない」(梅沢さん)。