基本は原発施設の中で貯蔵する「オンサイト中間貯蔵」です。北欧はオンサイト貯蔵が多いが、日本は、原発を建設するときに地元に対して、廃棄物は地元には捨てません、と約束をしているので、なかなか進んでこなかった。しかし、それで時間を稼いで、その間に核種変換研究を進めるしか今のところ道はない。

――核のゴミの中間貯蔵を住民にお願いするならば、全国の原発立地地域などと改めて交渉することになりますね。

 現在原発が立地している17の地域(廃炉決定分も含む)は「中間貯蔵」が不可避となります。空冷式のキャスクで数十年間は保管しなければならない。最終処分地は、核種変換の技術が開発されれば、どこかに決まると思うが、今のところ未定です。

 立地地域での「リアルでポジティブな原発のたたみ方」としては、まず原発を火力にシフトさせることです。カーボンフリーの火力発電所を建てれば、永久に電源地帯として活躍していける。また、廃炉ビジネスは何十年にもわたって膨大な雇用を生み出すことができる。さらに、電力消費地からは立地地域に対して、使用済み核燃料の保管料を継続的に支払う仕組みを作らなければなりません。

――そうは言っても、「核のゴミの引き受け」は、各地で猛烈な反対運動が起こるでしょう。そこに触れたくないから、政党も行政も「原発のたたみ方」に具体的に触れたがらない?

 そうですね。原子力でまともな政策を打ち出そうとすれば、票は減るばかり。官僚も政治家ににらまれる。「先送り」が原子力政策の歴史だったんです。

 反対派も「原発ゼロ」と言ったとたんに即時思考が停止して、対案がない。(1)火力シフト(2)廃炉で雇用確保(3)使用済み核燃料への保管料。この3点セットで、原発はたたむことができるのですが。イソップ物語の例えを言うのですが、オーバーを着ている人に北風を吹かせても脱がない。北風でなく、太陽戦略を考えよう。どうやって出口を見つけるかが大事です。河野さんや「原発ゼロ」を唱える小泉純一郎元首相は、再エネ一本槍でエネルギーを考えるのでなく、もう少し総合的に考えれば、出口が見えてくると思います。

◎橘川武郎(きっかわ・たけお)氏 1951年和歌山県生まれ。国際大学副学長、東大・一橋大名誉教授。経産省・資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会委員などを歴任

(聞き手/ジャーナリスト・菅沼栄一郎)

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