――発電で残ったウランやプルトニウムを再び燃料として使う「核燃サイクル」事業は、すでに破綻しているとの見方が強いですね。
使用済み核燃料対策はいま「サイクル一本」やりです。これは実現不可能な「絵空事」です。六ケ所村の再処理工場はフル稼働すると、毎年7トンのプルトニウムが出ます。今や、日本は原爆6千発分に相当する46トンのプルトニウムを国内外に保有している。でも、16年に高速増殖原子炉「もんじゅ」を廃炉にした結果、処理できるのは「プルサーマル」しかない。今のところ、この方式が可能なのは玄海3号機など計4基だけ。一基当たり消費できるプルトニウムは年間0.5トンだけだから、合わせても2トン。毎年5トンずつプルトニウムがたまる計算になる。
日米原子力協定で核燃料を平和利用すると約束し、IAEA(国際原子力機関)が監視することで「再処理の仕組み」が成り立っているが、この「消費プラン」が崩れてしまっている。六ケ所村の施設では、既に2006年に試運転が始まり汚染されているので、廃棄にはとんでもないお金がかかる。使うしかない。
一方で、世界では、再処理せずに地下に直接処分する「ワンススルー」(1回で廃棄する)方式が主流です。サイクルとワンススルーの二本立てを、現実的な解決策として私は主張してきました。
――核燃サイクルをやめるのは、難しいのでしょうか?
「六ケ所村の再処理施設をやめる」といったら、何が起きたか。12年に、民主党政権が「30年に原発ゼロ」を打ち出して、枝野幸男経産相が青森県に行ったら、逆襲に遭った。大間原発と島根3号機の工事再開や六ケ所の再処理施設継続を約束させられた。再処理工場を止めて使用済み核燃料を全国の原発に戻した途端に、いま動いている原発の多くは止まる。置き場がなくてどうしようもなくなる。それと同じことが予想されます。当面は、プルトニウム2トン分に限定して運転する方式も考えられます。
■各地で反対運動おそれ、政治は各論先送り
――一方で、直接処分は、全国各地への影響が大きそうですね。
直接処分でも再処理でも、最終処分場は必要です。最終処分には、最低でも2万年はかかるでしょう。プルトニウム239の半減期は2万4千年ですから。最終処分場はなかなか見つかりません。唯一の解決策が、「核種変換」です。危険な期間を数百年に短縮する方法ですが、工学的には難しい。世界には450基の原発がありますから、人類はこれにチャレンジせざるを得ないんです。核種変換へのチャレンジには数十年かかるでしょうから、その間は「中間貯蔵」で行くしかない。