写真家・赤鹿麻耶さんの作品展「ときめきのテレパシー」が10月14日から東京・品川のキヤノンギャラリー Sで開催される。赤鹿さんに聞いた。
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「ときめきのテレパシー」というなんとも不思議な題名について聞くと、「なんか、昔の歌謡曲みたいなタイトルですよね」と、笑う。「でも、かっこうをつけずに、自分のやっていることを正直に探っていったら、こんなこんな言葉になりました」。
「『ときめきのテレパシー』というのは人とのコミュニケーションのことだと思っていて、小さなときめきをきちんと信じてつくり続ければ、どこかの誰かに届いているかもしれないな、みたいな。まあ、テレパシーをけっこう本気で信じている私もヤバいと思うんですけれど(笑)」
展示される作品もけっこう変だ。例えば、看護師に扮した女性がお互いの胸に聴診器を当てている写真。
「コロナ禍で、街中なのに人がいない。いそうなのに、いない感覚、『半透明』をキーワードにつくり出した作品です。お互いの鼓動を聞いて、心臓を確認しあう。生きているかな? 本当にいるかな? という感じ」
見た目はちょっとエロチックだが、話を聞くと、なかなかシュールな作品である。
スナップ写真に写った女性の口元には何やら白いものがついている。ぱっと見、(ソフトクリームかな?)と思ったら、違った。
「骨をくわえているんです。チキンを食べたところなんですけれど、『骨しか残っていない』みたいなことをつくり込んで撮影しています。あったものがない感覚をどうやったら人で表せるのか、と思って写した」
作品の根底にあるのは「夢のような感覚」と言う。
「ちょっとよく分からない、変な感じがする、何かがズレている、とか」
■写真を「つくる」感覚
これまで、人の夢の話を作品化したりしてきた。夢についてリサーチして、時空を超えたような絵にしたいと思い、中国や台湾、香港などにも足を運んだ。
その一つが巨大なゴーストタウンがあることで知られる中国・内モンゴル自治区のオルドス市。ここでは、夢に関連する「不在の感覚」をつかみたかったという。