「定年制」での引退を迫られた故・中曽根康弘元首相(C)朝日新聞社
「定年制」での引退を迫られた故・中曽根康弘元首相(C)朝日新聞社

 一方、80歳を機に政界を引退した元建設相の亀井静香氏(85)は、立候補を続ける二階氏の気持ちは「わかる」として一定の理解を示す。

「まだあいつは82歳だし、鼻たれ小僧だよ。今は議員も100年時代。逃げ出しちゃ駄目だし、二階には頑張ってほしい。特に今の与党は、若い連中がモヤシみたいに頼りないからね。そういう時には年寄りがしゃしゃり出て、『お前たちは何してんだ!』って背中を押さなければいけないんだよ」

 和歌山3区で盤石の地盤を築いてきた二階氏であれば、次の総選挙でもまず負けはしないだろう。自民党も小選挙区では年齢制限を設けていないため、年齢に関係なく立候補することができるが、角谷氏は「負の側面もある」と話す。

「重鎮が『俺はまだやれる』と言えば、地元の有権者は当選させようと票を集めてしまう。だから、選挙で落ちることはほとんどない。『まだ元気なのだから、どんどん働いてもらえばいい』という意見は一見正しいように思えますが、政治家が一つの選挙区にしがみつけば、有権者の選択肢はそれだけ狭まるわけです。候補者も次第に権力のうまみだけを吸いたがるようになったりと、良いことばかりではありません。後進からすれば『あなたが牛耳っている限り、若い人が物を言いにくい』『ゆっくり休んで、後は私たちに任せてください』と思っている人も多いと思いますよ」

 自民党は衆院選比例代表では「73歳定年制」の独自ルールを設けている。比例代表は名簿順でベテラン議員の方が有利になる傾向があるため、「世代交代」を促すのが狙いだ。

 このルールが生まれたのは小泉政権時代。当時から長老議員の引き際は議論になっていたが、制度を設けた2003年には早速、引退をめぐる象徴的な騒動が起きた。当時85歳で比例の単独候補だった中曽根康弘氏(故人)に、小泉純一郎氏は「定年制」を理由に立候補を断念するよう勧告した。だが、中曽根氏は「これは政治的テロだ」として憤慨。議論が巻き起こったが、結局、中曽根氏が矛をおさめる形で同年に引退した。小泉氏は後に「嫌なことを言いに行くのは気が重かった」と述懐している。

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若手議員は「定年制」の維持を熱望