グラントの電子投票サービス「e投票」の使用例。候補者の話をオンラインで聞いた後にその場で投票(同社提供)
グラントの電子投票サービス「e投票」の使用例。候補者の話をオンラインで聞いた後にその場で投票(同社提供)

 前述の中谷議員は隣国である韓国の例を挙げる。韓国でも、まだ国政にネット投票が導入されるには至っていないが、ブロックチェーンを活用した電子投票システムがすでに開発されているという。

「韓国では政府への信用という面でのハードルが高く、日本と同じように政府に懐疑的な思いを持っている人々が多いです。そうした現状を克服すべく、ブロックチェーンを使ったネット投票システムを町内会の選挙など民間に貸し出し、使ってもらうことで信頼の醸成を試みている段階です」(中谷議員)

 ただ、どんなにセキュリティーを強化しても、簡単には防げそうにない問題もある。例えば、いつでもどこでも投票が行えるようになれば「誰かの家で集会を行い、特定の政治家に集団投票する」「息子がおばあちゃんの代わりに電子投票を行い、実質1人で複数の投票権を得てしまう」などの行動をする人が出て、新たな社会問題の温床になりかねない。

◆デジタル世代は与野党とも共感

「投票の強要やなりすましなどの行為は公職選挙法違反として、2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科せられますし、そうした行為をほう助した人も罪に問われます。違反が絶えないようなら、罰則を強化することも検討できます。また、本人がその投票に不満を持っているときには、後から投票を上書きできる仕様も想定しています」(同)

 数々の壁はあっても、ネット投票の導入は不可能ではないように思える。だが、実は「一番の障壁」は技術ではなく、導入に消極的な政治家たちだという。特に、強固な地盤や支持団体などの組織票を抱える政治家ほど、ネット投票を嫌がる傾向があるという。

「選挙を競技に例えるとわかりやすいかもしれませんが、ルールがガラリと変わってしまうとチャンピオンが代わるほどのインパクトがありますからね。投票率が上がると、俗に無党派層と言われる人々の票が増え、組織票が強い政治家は戦略を読み切れなくなる。組織票の強い政党ほど、低投票率のほうが選挙戦を有利に運びやすい。従来の投票方法で権力を保ってきた方はゲームチェンジを嫌悪するでしょう」(同)

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