グラントの電子投票サービス「e投票」の使用例。送られてきた用紙からQRコードを通して投票(同社提供)
グラントの電子投票サービス「e投票」の使用例。送られてきた用紙からQRコードを通して投票(同社提供)

 長年、こうした問題に実現を阻まれてきたネット投票だが、昨今の技術の進歩により、ついに壁が打ち破られる可能性が出てきている。電子投票などデジタルシステムの研究を長年手がける早稲田大学基幹理工学部情報理工学科の佐古和恵教授はこう話す。

◆ファクスはO‌K ネットなぜ駄目

「投票データを第三者にわからないように秘匿する暗号化や、ブロックチェーンの技術を使って投票データを送信したのが匿名の有権者本人であることを証明するゼロ知識証明技術など、最新の技術を駆使すれば、投票の秘密を保ったまま不正を暴くことは可能です。すぐに完璧なシステムを構築するのは難しいかもしれませんが、少しずつあるべき理想に近づけていくことはできるはずです」

 新技術により、紙の投票以上に信頼性が保証される可能性もあるという。

「紙の投票では各候補の獲得票数を数字で確認するだけですが、最新の技術を使えば自分の1票がその中に正しく計上されていることを確認することもできます」(佐古教授)

 とはいえ、昨今は海外のハッカー集団がサイバー攻撃を仕掛けて企業を脅し、大金を奪おうとするなどのニュースも相次ぐ。大規模なシステム障害で金融機関がストップするようなトラブルもある。“デジタル不信”に陥っている人々を説得するのはたやすいことではない。それでも、前出の山崎氏はこう説明する。

「ネット投票というと多くの方が個人認証とセキュリティーを気にしますが、世の中を見渡すと、例えば銀行は基本的にカードの持参と数字4桁のパスワードで認証が行われていますし、金融のほとんどはオンライン取引で成り立っています。今でも遠洋漁業の漁師のために『洋上投票』というファクス投票の制度がある。それは電子投票ではないかと役所に聞いたら『いや、紙だから原本があるので違う』と。投票所では、投票所入場券の持参が本人の証明となる。紙による現状の本人認証はそういうレベルだということです。ネット投票ならば、求められれば指紋認証、電話認証、マイナンバーカードによる認証等、多重認証も可能です。個人認証や監査証跡の取り組みにより、不正行為そのものの根絶が可能です」

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ