新首相誕生の大騒ぎも束の間、国の行方を左右する衆院選が10月末に迫る。日本では投開票がいまだに手作業で行われているが、デジタル技術の発展により、海外ではインターネット投票を行う国が出てきている。国政のあり方をガラッと変える可能性すらある新技術の力とは──。
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6月11日、立憲民主党と国民民主党が、衆議院に「インターネット投票推進法案」を提出した。実現すれば従来の紙での投票に加え、スマホやパソコンなどのデジタル端末からいつでもどこでも投票できるようになる。法案が掲げるスケジュールではまず、在外投票や新型コロナの宿泊療養者・自宅療養者の投票についてインターネット投票(以下、ネット投票)を早期実施。2025年の参院選でネット投票を本格実施し、以後は地方選挙などでも順次実施するという。
ネット投票は、単に「簡単に投票できる」という以上の変化をもたらす可能性を秘めている。同法案の筆頭提出者である立憲民主党の中谷一馬衆議院議員はこう語る。
「ネット投票というと若者の投票率が上がりそうなイメージですが、05年からネット投票が実現しているエストニアでは高齢者の投票率のほうが上がりました。足腰が悪いなどの身体的な問題や交通の不便さのせいで投票に行けなかった人たちが、どこからでも投票できるようになったからです。ネット投票ならば、全ての人が等しく投票する機会を確保でき、参政権の保障につながる。日本国憲法の精神にも則っていると考えています」
日本人の国政選挙への投票率は下落傾向にあり、17年の衆院選では53.68%、19年参院選の投票率は48.80%。どちらも戦後2番目に悪い数字だ。ネット投票は、民主主義の危機とも言えるこの状況を打破することに一役買う可能性がある。
電子投票サービス「e投票」を運営し、労働組合や学術学会、マンションの総会など民間団体でのネット投票を長年手がけるグラントの山崎元彰社長はこうも語る。