「指定の場所に移動して投票しなければならない今の国政選挙は、現役で働く若い世代にとっては非常に面倒。たとえ期日前投票でもリタイアする人が多い。ネット投票ならば天候などの外的要因に左右されず、休日の貴重な時間を移動で削ることもないので、今より投票率が上がるでしょう。私どものサービスでも、全年齢層の投票率が紙よりも上がる傾向にあります。私どもが運営するのはあくまで民間向けのシステムですが、国政選挙で実現すれば、民意が政治に反映されやすくなります」
同社が行うネット投票では、投票者にQRコード付きの投票用紙を配布。投票者はスマートフォンでQRコードを読み取って、ネット上で投票できる。希望者は従来どおり紙での投票も可能だ。投票結果は全て電子化され、集計結果が瞬時にわかる(認証及び投票方法は、用途別に異なる)。
「ネット投票を導入したことで、それまで8時間かかっていた集計作業がほぼゼロになった事例もあります。集計ミスがなくなりますし、集計などのスタッフも大幅に減らせるため人件費も節約でき、投票にまつわるコストも大幅に下がります。一度導入してやめた企業・団体はほとんどありません」(山崎氏)
デジタル庁の前身である内閣官房IT総合戦略室が行ったデジタル改革についての市民からのアイデア募集でも、「実現してほしいデジタル政策の人気ランキングの1位はネット投票の実現」(中谷議員)だったという。
とはいえ、懸念される点もある。NECの元研究者で弁護士の宮内宏氏は、ネット投票の推進自体には賛成だと述べつつ、こう指摘する。
「ネット投票は技術的にはすでに可能ですが、不正が行われたらどうするか、という問題が残っている。一番大変なのは、投票の匿名性を担保したまま不正を暴くことです。いくら不正を暴けても、国民が誰に投票したかがわかってしまうと、憲法で定められた選挙の基本である『秘密投票の原則』が破られてしまいます」
従来は投票の際に立会人が見ているため投票の正確性を担保できる。票は保存され、いざとなれば集計の正しさを後日確認できる。電子投票に同じことができるのか。