「ブラック校則」が問題視されてきたなか、いま全国で見直しの動きが加速している。注目されるのは、学校内で閉じてきた「校則」の問題にNPOや弁護士会など学校外の「第三者」が加わる流れと、生徒主体の取り組みが広がりを見せていることだ。AERA 2021年10月18日号の記事を紹介する。
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9月中旬、東京都世田谷区の駒場学園高校を放課後に訪ねると校則をめぐる真摯なやりとりが交わされていた。
「生徒会長の選挙公約に掲げた、ツーブロック禁止などの男子の髪形の校則を見直したい」
「うちの学校の校則が厳しいと、僕自身は思わないけれど、不満や疑問の声をくみあげられる仕組みは必要」
「その場にいる人たちが安心でき、かつ個性も発揮できるのがいいルールでは」
いま全国で「校則の見直し」が広がっている。今年6月、文部科学省は全国の教育委員会に通知を出し、生徒指導の基本書である「生徒指導提要」の改訂に向け有識者会議も設置した。
ただし、駒場学園の校則見直し、従来とは様子が少し違う。生徒の前で進行をするのは、教師ではなく、教育NPO・カタリバの「ルールメイキングプロジェクト」のコーディネーターだ。「校則」の問題はこれまで学校の「中」のこととして閉じられてきたが、「第三者」が加わる新たな動きが出始めている。
カタリバは、2019年に同プロジェクトを立ち上げた。昨年度、実施したのは2校だったが、今年は一気に27校に増えた。生徒が主体となり、既存の校則やルールについて教師や保護者などと対話を重ね、納得解を作る。その過程を通じて、課題解決や合意形成、意思決定の力を育むのが目的だ。
■探究的な学びが目的
駒場学園は今年4月に導入し、手を挙げた生徒会のメンバーを含む1、2年生15人が参加。取材した日は4回目で「見直したい校則とその理由」「よいルールとは何か」を各自プレゼンテーションした。教育推進部長の長田一郎さん(56)は言う。
「ルールとは何か。本質をとらえた探究的な学びが導入の目的です。コーディネーターは生徒が言葉に詰まってもじっと待ち、伴走するのがうまいと感じます。教師は生徒の足りないところを見つけ、つい指導したくなりますので」
2年生で、冒頭の発言をした、生徒会長の渡辺俊諒さん(17)はプロジェクトに意欲的だ。