(AERA 2021年10月18日号より)
(AERA 2021年10月18日号より)

 原因がさらにわかりづらいのが、「蕁麻疹」だという。蕁麻疹では、皮膚や粘膜の「マスト細胞」がアレルゲンとIgE抗体によって活性化されることでヒスタミンなどが放出され、かゆみなどの症状につながる。

「けれども、マスト細胞は非常に多くのものに反応するので、何に反応しているのかを特定することは非常に困難です」

 食物アレルギーのある人は蕁麻疹も起こりやすく、蕁麻疹にもさまざまな種類がある。

「最も多いのは特定のアレルゲンやきっかけもなく発症する『慢性特発性蕁麻疹』。ストレスや、汗や寒さによる蕁麻疹、日光に当たると出る『日光蕁麻疹』など、さまざまな要素が関与し合併している。有病率は1%程度と言われていますが、ほとんどは原因不明です」

 だが、原因はわからなくても、「治療はできる疾患になりつつある」と葉山医師は言う。治療薬が日々進化しているからだ。

 アレルギー治療薬はこれまで抗ヒスタミン薬が一般的だったが、「生物学的製剤」が登場した。たとえば、「ゾレア」だ。

「蕁麻疹のほとんどは『自分の体の中にあるタンパク質に対する、IgE抗体を介する免疫反応』ではないかという仮説がある。原因不明で、周囲のアレルゲンをカットしても蕁麻疹は出る。なぜなら、『自分の体に原因があるから』という仮説です」

 ゾレアは、「そのIgE抗体を動けなくする=抗IgE抗体を作る」という発想で開発された。現状で保険適用があるのは慢性特発性蕁麻疹が6週間以上続く人、重度のアレルギー性鼻炎や喘息の人だ。重症のスギ花粉症も2~5月限定で投与できる。

「特に蕁麻疹に効果があり、大学でもすでに100人以上に使っていますが、約9割の症状が落ち着きました」

 アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹を慢性的に繰り返す疾患で、全国に50万人を超える患者がいる。皮膚のバリア機能が低下しているため、抗原や刺激が入りやすく、アレルギー性の炎症も起こりやすいという。アトピー性皮膚炎でも、生物学的製剤「デュピクセント」という薬が使われるようになってきた。対象は中等症以上だ。

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