例えば、サッカーのブラジル代表ネイマール選手は、自分をレイプ容疑で訴えた女性のヌードを投稿したが、1日以上も削除されずにいた。また、トランプ前大統領の支援者らが、「ヒラリーとビル・クリントン夫妻は児童性愛グループの一員」としたり、トランプ氏が「難民は動物」としたなどの問題投稿は無数にあった。

 インスタグラム利用者の若年化は進んでおり、40%以上は22歳以下で、米国では1日平均約2200万人の10代の若者がインスタグラムを利用している。これに対し、フェイスブックでは10代の利用者は同500万人しかいない(WSJによる)。これが、議会が規制論で一致している理由だ。

 しかし、ソーシャルメディアを規制する法案がどのような形なら可能なのかは、長年の課題だった。

 インスタグラムの裏にある「自動推奨システム」などは、刻々と変わっている。若い人がよく使うTikTok(ティックトック)やSnapchat(スナップチャット)も然りで、各社全く異なるシステムを設定している。このため、議会で法案の草稿に着手したとしても、1年以内での制定は困難とされる。

 そんな最中の10月4日、フェイスブックとインスタグラム、同じく傘下の対話アプリ「ワッツアップ」が、長時間にわたりダウンする大規模な障害が起きた。これらのアプリでビジネスをしたり、社内連絡に使ったりしている事業者や利用者が大打撃を受けた。内部告発と相まって、ニューヨーク・タイムズなど米メディアは一斉に、フェイスブックが弱体化している可能性を指摘した。

■証言は誤りだと指摘

 ザッカーバーグ氏は、メディアの報道やホーゲンさんの証言は、同社の業務や目的を誤って伝えていると指摘。一方、ソーシャルメディアが持つ潜在的な危険性については、内部調査を続けていくと述べた。しかし、告発内容についての社内調査をするとは、同社の誰も言っていない。なぜか。

 ザッカーバーグ氏は、大統領選挙などの問題をめぐり、過去に何度も議会に呼ばれて証言している。しかし、常に世間の非難からうまく逃れる反論を見つけ、同社は20年の年間売上高860億ドル(約9兆8千億円)という急成長を続けてきた。ただ、今回ばかりは、そうはいかない「最大の危機」と言えるだろう。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2021年10月25日号