この報道によって、ジョン・ブロックマンの時代は終わる。クライアントであった著者の中にも、抗議してブロックマンを離れる者も出てきた。Edgeは、2019年以降ほとんど更新されていない。

 ジョン・ブロックマンは、現在81歳。事件以降ほぼ引退し、エージェント自体は息子のマックス・ブロックマンがCEOとして運営している。

 その息子とやりとりして私は先の二つのタイトルをとったのだが、今回、「財団がエプスタインから寄付をうけていたことが明るみになってどんな影響が著者エージェント業にあったか」を含めて、著者エージェントとしての「ブロックマン」について取材をしたいと申し込んだが、期限までに返答はなかった。

 2022年10月にフランクフルトで行われたブックフェアに、ブロックマンは参加している。その最新の権利リストを入手したが、かつてのような輝きはうせている気がした。

 念のために付け加えれば、スヴァンテ・ペーボもジェニファー・ダウドナもEdgeの会員だったことはない。

下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。

週刊朝日  2022年11月25日号

著者プロフィールを見る
下山進

下山進

1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。聖心女子大学現代教養学部非常勤講師。2018年より、慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授として「2050年のメディア」をテーマにした調査型の講座を開講、その調査の成果を翌年『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)として上梓した。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善、1995年)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA、2002年)、『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。元上智大新聞学科非常勤講師。

下山進の記事一覧はこちら