菅谷憲夫医師(神奈川県・けいゆう病院)

「新型コロナとインフルエンザは、たとえ医師でも症状から見分けることはできないので、同時に流行すれば混乱することが目に見えています。そうならないためにも、発熱外来だけではなく、一般的な病院やクリニックでも積極的に発熱患者を診る体制をつくっておく必要があると思います。同時にインフルエンザワクチンの接種を進めていくことが大事です」

 新型コロナのワクチンをこれから打つ予定の人は、接種スケジュールも気になるところだ。欧米ではすでに、右腕にコロナ、左腕にインフルといったふうに、腕を変えての同時接種が始まっている国もある。しかし日本の場合、現時点では新型コロナのワクチンとそれ以外のワクチンは、2週間の間隔をあけることになっている。ではどちらのワクチンを優先すべきか。

「現時点では、死亡率の割合が高い新型コロナのワクチンを優先したほうがいいでしょう」

自宅療養時の注意点

 どちらも流行している場合、発熱すると両方の検査を受けることになる。現在は共通の検体で新型コロナとインフルエンザを同時に検査できるキットもある。陽性となって自宅療養する場合、どのような点に注意すればいいのか。

「インフルエンザは解熱後もウイルスを排出すると言われているので、発症後5日間、かつ解熱後2日間は自宅療養となっています。一方新型コロナは発症後1週間ほどたってから肺炎が重症化しやすいという特徴があるので、発症後10日目くらいまでは症状の再燃、悪化に注意すべきです」

 インフルエンザと新型コロナは同時感染すると、重症化しやすいという報告もある。新型コロナ感染者の減少傾向は続いているが、第6波に向けた備えも必要だ。インフルエンザの予防もその1つといえるだろう。

(文/中寺暁子)

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