青天の霹靂でしたが、病院の気功道場のスタッフを総動員して、これに応えることにしました。この「気功専科」という番組は92年4月から12回放送されました。
この放送が始まると、旧知の公益財団法人の常務理事(のちに理事長)から「うちで気功の教室を開きたいので、講師をして欲しい」と電話が入りました。実は彼は以前からその計画を持っていたのですが「気功にはいかがわしさが漂っている」と二の足を踏んでいたのです。ところがNHKの放送で「もう気功は市民権を得た。大丈夫」となったのです。NHKの権威は偉大だと感心しました。
中国での気功ブームは99年に中国政府が気功のなかで一大勢力だった法輪功を全面禁止にして抑え込んだことから、下火になります。日本では90年代に発覚したオウム真理教事件が気功にとって逆風になりました。星野さんと津村さんは残念ながらお二人とも昨年、亡くなりました。
世の中の動きによって気功はブームになったり、すたれたりします。でもその素晴らしさはずっと変わりません。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年10月29日号