全国在宅療養支援医協会がおこなったアンケート調査によると、回答があった在宅医の8割以上は、かかりつけの患者が新型コロナに感染した場合、「在宅で診る」と答えたそうです。

「新型コロナであっても、在宅医の『さいごまで自宅で診る』という意識は変わらないと思います」

 感染リスクに対する不安、家族と自由に面会できない……、新型コロナの流行は病院や施設にいる難点を浮き彫りにしました。それに伴い、在宅医療のメリットを感じる人が増えたと言われています。

「日本の全死亡者のうち、85歳以上が半数を占める時代です。85歳以上であれば、何かしらの介護や医療を必要としています。病院医療、すなわち治す医療からQOL(生活の質)を支える医療への変化が必要です。施設には限度がありますから、介護や医療が必要であっても自宅で過ごすことになります。当然在宅医療は増えます」

 そうしたなかで求められるのが、地域の介護力や生活支援です。

「老老介護や高齢者の一人暮らしが増え家族介護は限界を迎えています。介護、生活、医療が一体となり支える街づくりが必要です」

 また、現状では本人の意思ではなく、家族の意思が優先される傾向があります。

「本人の意思を尊重することも大きな課題です。そのためには、本人があらかじめケアについて計画しておくこと。要介護になったり、さいごの医療を受けたりする際に、どういうケアを受けたいか。新型コロナの流行はそれを考える機会にもなるかもしれません」

(文・中寺暁子)

新田國夫医師●にった・くにお

全国在宅療養支援医協会 会長

1979年帝京大学医学部卒。同大学病院第一外科などを経て、90年に新田クリニック(東京都国立市)を開設し、在宅医療を開始。92年に医療法人社団つくし会を設立。

※週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2022年版 コロナで注目!在宅医療ガイド』より

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