こうしたデータをもとに上さんは、「第6波」のピークに見舞われる時期を「来年1~2月ごろ」と予測する。
では、なぜ新型コロナは季節の変化によって流行が周期的に訪れるのか。
「紫外線や気温、湿度などさまざまな要因を指摘する論文が発表されていますが、決め手はありません。私たちは風邪がなぜ冬場に流行するのかという理由も明らかにできていません。冬場に流行する現象を指して『季節性』としか表現できていないのが実情なのです」(上さん)
上さんは、ワクチン接種の進展が感染者数の減少につながったという見方には否定的だ。
■ブースターの準備急げ
世界で最も早くワクチン接種を進めたイスラエルでは、7月末までに国民の6割超が2回接種を完了した。さらに8月1日からは、2回目の接種から5カ月が経った60歳以上の高齢者を対象に3回目の接種(ブースター接種)が始まった。8月29日からは対象年齢が12歳以上に引き下げられた。
しかし、9月に入り、人口100万人あたりの新規陽性者数が1200人を超え、ピークを迎えた。ワクチンを接種していても感染するデルタ株の「ブレークスルー感染」が原因と見られている。
「国民の多くがワクチン接種を済ませたイスラエルで再び大流行したということは、ワクチンで新規感染者を減らす、という捉え方自体に無理があると思います」(同)
イスラエルはブースター接種を進める一方、新たなロックダウン(都市封鎖)は実施していない。そのかわり、レストランなどを利用する際は、ワクチンの接種証明書や新型コロナの陰性証明書などの提示を条件とし、マスク着用も義務付けた。その結果、1日あたりの感染者数は80%以上減少し、重症者数はほぼ半減した。
問題は、重症化を防ぐワクチンの効果がどれぐらいの期間もつのかだ。イスラエルは4カ月しかもたないと判断し、4回目の追加接種も準備している。一方、日本では3回目の接種について、「早ければ12月からの開始」を想定している。上さんは日本の準備は遅れている、と懸念する。
「直近の感染者率の減少に目を奪われていてはいけません。いま注目すべきなのは、ワクチンの効果が思ったよりも短かったことです。ワクチンのブースター接種の実施率に世界の注目は移っています」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年11月1日号