日本は現在、人口の7割近くがワクチンの2回接種を終えている。免疫を獲得している人の割合が増えているのも確かだ。重症化を防ぐワクチンの効果も明らかになり、治療薬の開発も進む。新型コロナは徐々にではあるが、「重症化しにくい感染症」に変わりつつある、といっていいだろう。
「そうなったとき、『感染しない』ことが最重要課題なのでしょうか。私たちはどういう社会を選択するのか。本当に減らすべきものは何なのか。いまこそ、議論が必要です」
山本教授は、感染者数に重点をおいて流行の状況を評価するのではなく、重症者数や死亡者数の推移といった指標に重点が移っていくフェーズに入りつつあると考えている。
一方、感染者減少の最大の要因は「ウイルスの季節性」にあると指摘するのは、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長だ。
「日本だけでなく、北半球の先進各国で8月下旬~9月にかけて軒並み減少モードに入っているのがその理由です。行動規制を解除している国でも減ったので、人流はさほど影響していないと思います」
ただ、英国は10月第2週あたりから感染者数が上昇傾向に転じた。ドイツも10月に入って下げ止まりの傾向が見られる。
「これらは、冬の流行が始まったからだと見ています」と上さんは言う。
■年明けにも「第6波」
両国に共通するのは緯度の高さだ。日本でも13日、厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」が、秋田や岩手などの一部地域で、感染者1人が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」が上昇していることを指摘した。北海道でも感染者数の下げ止まり傾向が見られる。
新型コロナの感染拡大が始まった昨春以降のパターンを参考にすると、日本国内での新型コロナの流行期は冬、春、夏の年3回ある。冬場のピークは1月中旬、春のピークは4カ月後の5月中旬、夏場のピークは3カ月後の8月下旬だ。夏のピークと冬のピークは5カ月の間隔が空く。変異株の影響で感染者数が膨らむと、ピークが後ろにずれ込む傾向も見られるという。