AERA 2021年11月1日号より
AERA 2021年11月1日号より

 さらにコロナ禍もあった。

「若者も自粛生活を余儀なくされたり、医療従事者の友だちが大変そうだったりと政治と自分の生活が地続きであると気づいた人が多かった。そういう意味で関心は高まっています」

 政治とメディアの関係に詳しい東京工業大学の西田亮介准教授(38)は、若者の低投票率についてこう分析する。

「今の若者は偏ることを嫌う傾向にあります。ネットでの炎上を恐れてもいるようです」

 20代の投票率が世代別で最も低いのは今に始まったことではなく、1969年から。ただ、現在の20代の投票率は50年前の半分にすぎない。

「近年の研究では、投票経験を持たない人は、年齢が上がっても投票に行かないと指摘されています。実際、今の40代は投票率が50%前後です」

 前出の鈴木准教授も言う。

「政治が高齢者に傾いていると言われるが、20年後には終わる。そのとき、政治家が年長世代へ向けていたようなメッセージを投げても若者には届きません」

 将来のことを考えても、今の若者の投票率を上げることは重要だ。

■当選者が変わる可能性

 また、投票率上昇で当選者が変わる可能性もある。民主党政権が誕生した09年衆院選(投票率69%)の与党・野党各得票数から前回衆院選(同54%)分を引いた票数を、投票率上昇の割合だけ前回の各党に足すとした場合、2.5ポイント上昇したら野党候補の合計票が当選した与党候補の票を上回った63選挙区に加え、もう9選挙区で野党が上回る。一方、今回が岸田新政権へのご祝儀相場であれば、投票率上昇は与党有利に働く。いずれにせよ、今回は投票率のアップダウンも見逃せない。(編集部・井上有紀子)

AERA 2021年11月1日号