AERA 2021年11月1日号より
AERA 2021年11月1日号より

「こちらで用意した言葉もあったのですが、出演者にインタビューしたときの『私はこう思っている、感じている』という言葉のほうがとても素敵で心に響くものでした。結果としてほとんどの箇所で、そうした出演者自身から出た言葉を使いました」

 クリエーティブディレクターの辻愛沙子さん(25)も10月、広告業界の有志数人と「GO VOTE JAPAN」を始めた。投票率向上が目的で、まずは最も率の低い若者に呼びかける。インフルエンサーらに「#わたしが選挙にいく理由」を動画で話してもらった。

「中高年向けの洋服店に若い子が入りにくいのと同じで、今の(選挙)ポスターでは若い子に響かないんです」(辻さん)

 ウェブサイトに「10.31」とポップに描いた8種類のイラストを用意。このイラストと一緒に「投票、行きます」とツイートできる仕組みだ。

「芸能人でなくて普通の人でも、ツイッターで『投票に行こう』とか、何か政治的な話題をつぶやいたら、勉強不足だとか言われることがあります。イラストや投稿する機能があれば、投票に行こうと言いやすくなると思いました。日常の中に投票も政治もあるようになればいいなと思っています」(辻さん)

 投開票日前日まで東京・渋谷でビジョン広告も打つ予定で、今後も活動を続けていくという。

■まずは認めるのが若者

 こうした取り組みについて、若者とメディアに詳しい関西学院大学の鈴木謙介准教授(45)は、「感情的に強く訴えかけるのではなく、『私は』と呼びかけたことがよかったのだと思います」と分析する。

「従来の政治、選挙の話法が若者に通じなくなっています。候補者が『相手を蹴落として勝つ』と語気を荒くして盛り上がるのは、一定以上の世代です。会社で上司のハラスメントが問題になる時代に、政治家だけが対立候補を強く攻撃していいものか。まずは認めようというのが今の若者世代です」

 ただ、対立や勝利が嫌いなのではない。

「保革対立といったイデオロギーありきではなく、政策や人柄で選んでいるのです。数字に表れるのは先だと思いますが、LGBTQや#MeToo、気候変動の問題など若者の社会への関心が広がっていると感じます」

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