「自分たちがここまで物事を背負うことになるとは思っていなかった、と思う。『大変なことになっている!』と警鐘を鳴らせば、後は政治家や大人がなんとかしてくれるだろうと思っていた。でも、そうじゃなかった。自分たちで活動を続けなければいけないという責任感と重圧のなかでそれをしているんだ。それは例えればソファを運ぶのと同じ。一人で重いものを持つのは大変だ。でも誰かが助けてくれて大人数でやれば運べる。我々も大人として、少しでも手を貸さなければならない」

■時には不満を表そう
撮影から3年。最近の彼女の言動は、より強く激しいトーンになっている気もする。監督はどう感じているのだろう?
「時間ばかりが経過して何も進んでいないという焦燥感は強いはずだ。ただ、その捉え方には文化的な違いもあると思う。欧米では変化をもたらすために自分のフラストレーションをしっかり表す。行儀良くしていても物事は変わらない。女性の権利運動やBLMもしかり。時には不満を表して問題を表面化し、変えていかなければならない」
誰もが彼女にならなくてもいい。国によってやり方はさまざまでいい、と監督はいう。
「僕も最近は飛行機ではなく列車を使うようにしているよ」
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2021年11月1日号

