9月に緊急事態宣が全国的に解除され、飲食業や旅行業も含めて徐々に経済が回り始めた。リモートワークが一部解除された企業もあり、昼・夜ともに街の人出は増加した。そうなると、また課題となるのは小さな子どもの預け先だ。夜の街が息を吹き返せば、そこで働く家庭の子どもには“居場所”が必要になる。コロナ禍となって以降、夜間保育の状況はどうなっているのか。都内で唯一、24時間保育を行う保育園の園長と保育士に実態を取材した。
【写真】深夜に保育園ですやすやと眠る子どもたちの様子はこちら(福岡県)
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「来月にはまた園児が増える予定です。いま続々と見学者が来ています」
東京都新宿区にあるエイビイシイ保育園の園長、片野清美さんはこう話す。エイビイシイ保育園は、東京都で唯一、24時間保育を行う認可保育園だ。
園には0歳(生後43日以上)~5歳までの子ども90人が通う。11時~22時の基本の保育時間に加え、その前後13時間の延長保育が利用できるので、夜遅くまで親が働く家庭の強い味方となっている。深夜まで子どもを預けて働く親というと、いわゆる水商売をイメージしがちだが、子を預けている親の職業は多様だ。
「今は保護者の7割が企業や役所勤めの人です。医師、看護師、新聞記者や国家公務員、警察官などもいます。両親ともにそうした仕事をしている家庭もあれば、母子家庭、父子家庭も3割ほどいます」
夜遅くまで働く親の代わりに、保育園では夕食を食べさせ、風呂に入れ、20時には就寝させる。創立以来、認可外の期間も含めて38年間、昼も夜も変わらず保育を続けてきた。
しかし、コロナ禍で状況は一変。常時35人ほどいた夜間の利用者が半減したという。さらに、飲食店を経営していた保護者の中には、経営が立ち行かず店を畳んで引っ越す人もいた。
「こんなこと初めてですよ。0歳の新規入園者も4月は0人。保護者からいただく保育料も減りますし、深夜保育の補助金もなくなりました。抱えている保育士も多いので、経営も苦しかったですね」