コロナ禍は、園児たちの過ごし方や保育士の日々の業務にも影響を与えた。主任の冨田千尋さんはこう話す。
「おもちゃは使うたび消毒、ドアノブなど頻繁に手が触れる部分は常に手が空いた職員が消毒作業をします。給食もなるべく対面を避け、4~5歳の幼児クラスでは黙食を指導しています。幸いうちの保育園ではまだ感染者が出ていませんが、行事も行えず、子どもたちに日常を過ごさせてあげられてないもどかしさはずっと感じています」
そんな中、9月には緊急事態宣言が全国的に解除され、だんだんと日常が戻り始めた。4月には入園者がいなかったエイビイシイ保育園にも、徐々に見学者や入園希望者が増えてきた。
「9月ごろから増え始めましたね。今も続々と問い合わせが来ているので、年内には残りの枠も埋まってしまうと思います」
東京で24時間保育が可能な認可園は1つしかない。エイビイシイ保育園に入れなかった子どもは、ベビーホテルなど認可外の施設に預けられることになる。数年に一度、そうした施設で保育事故などが起こると、預けている親も一緒にバッシングをされてきた。しかし、今でもベビーホテルなどを利用せざるを得ない保護者は多い。なぜ認可の24時間保育園が増えないのだろうか。
「夜間の保育は昼間に比べてお金がかかります。夜間保育を増やすとなれば、今よりさらに(行政からの)補助を手厚くしてもらわないと、手を挙げる園はなかなかいないと思います」
夜間保育園が広がらない理由の一つに「行政の偏見があるのではないか」と片野さんは憤る。
「(担当者から)よく言われるんです、夜間なんて水商売の子どもばっかりだろうって。夜間の保育園なんか作ったら子どもを預けっぱなしにする親が増えると思われている。実際は企業勤めや公務員の親が大半ですし、いわゆる水商売と言われる職業の親だってちゃんと迎えに来ますよ、当たり前じゃないですか」
保育園の運営には保育士の確保が不可欠だが、給与や労働環境などの待遇が悪いというイメージから、働き手が集まりづらい現状がある。岸田文雄首相は、就任後の所信表明演説で保育士の待遇改善に言及したが、現場はどう受け止めているのか。