河合:大事なポイントですね。さっき申し上げた刹那主義がそうしたチャレンジマインドをそいできた部分があったと思います。もう一つ、平成の30年間にイノベーションが進まなかった大きな理由は、少子化にあります。若い世代が減るスピードって、ものすごく速いんですよ。我々が若かった頃は社会に余力があったので、若者の失敗は大目に見られていたし、すぐに成果を出さなくてもよかった。

 でも今は若者の数が少なく、即戦力として期待されています。すぐに会社に貢献しろと言われたらマニュアルに頼りますよね。そうすればそれなりの利益は上がるから。でも、それと引き換えに失われるものがあるんです。技術開発だけでなく流行を作るとかを含めて、いろんな意味でイノベーションは若者の専売特許です。日本は意識して若い人にチャンスを与えて「失敗していいから、どんどん挑戦しろ」と言わないといけない。

真山:若者はすごく冷静に見ていますよね。おかしいことをおかしいと言わない大人を見て冷めていく。これが一番困るんです。学生と話していると、「こんな日本でがんばる意味があるのか」と言われてしまいます。

河合:政治の影響もあるでしょう。例えば安倍政権で言えば、説明のつかないことが多すぎた。自分たちに近い人間へ利益を誘導して、メディアや国民がそれを批判しても一向に説明しない。

真山:政治の良識を壊してしまいましたね。昔は「非常識」と呼ばれていた“常識破り”が常識になっている状況を認め、その呪縛を解かなければならない時が来ていると思います。

 メディアや、我々のような立場の人間が「それはおかしい」と言うと、「何きれいごと言っているんだ」と世間から非難されるかもしれません。でも、だからこそ日本はこれまで最後の一線を越えなかったと思うんです。私は死ぬまで社会にもの申し続けたいと思っています。それが、老いていく我々の世代の使命だと思うからです。

河合:同感です。ところで、経済の視点からの好転は見込めますか。

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