先の衆院選では、自民党の甘利明前幹事長(72)が現役の幹事長で初めて、自身の選挙区で落選した。敗因の一つとして、連立を組む公明党の支持が広がらなかったことも挙げられている。甘利氏が公明党から推薦を得られたのは、3次推薦の10月16日。公示日の3日前だった。投開票前の読売新聞(10月29日付)は「甘利は自民支持層の9割弱を固めたが、公明支持層からの支持が6割弱と伸び悩む」と報じていた。公明党の支持母体である創価学会員はどう感じていたのか。選挙区を取材した。
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小田急線大和駅から、歩いて約15分。「創価学会大和文化会館」へ行ってみると、クレーン車が建材を吊り上げていた。現場の作業員は「今は、会館の建て替え工事をしています」と教えてくれた。
現地の看板には建物の用途として「礼拝所」とあり、注文者は「創価学会」と記されていた。近くの飲食店のおかみはこう話す。
「創価学会の人たちが、よく店の前を通りますよ。信者の人が4~5人でうちの店で食事してくれることもあります。いつも選挙があると『よろしくお願いします』と頼まれるんですが、今回の選挙では頼まれませんでしたね」
甘利氏の選挙区である神奈川13区は大和市、座間市、海老名市、綾瀬市の4市にまたがる。選挙は甘利氏と立憲民主党の太栄志(ふとり・ひでし)氏の一騎打ちとなったが、太氏が5529票差で勝利した。
得票数を市別にみると、4市の中で、甘利氏が勝ったのは綾瀬市のみで1勝3敗。太氏は大和市で約6800票、座間市で約800票、海老名市で約900票の差をつけた。
太氏の選挙対策委員長兼事務局長を務めた佐竹百里綾瀬市議は選挙結果をこう分析する。
「甘利さんは地主や農家に強いんです。綾瀬市は電車の駅がないので、(商店主より)地主や農家の方が多いから甘利さんが有利です。今回はその綾瀬市で追い上げて差を詰められたのと、大和市で引き離したのが勝利につながったと思います」