東尾修
東尾修
この記事の写真をすべて見る

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修さんは、今季の若手選手の躍進がさまざまな影響を与えると指摘する。

【写真】胴上げされるオリックスの中嶋聡監督はこちら

*  *  *

 日本シリーズはオリックスが2敗1分けから4連勝し、26年ぶりの日本一を決めた。私が西武の監督をやっていた1996年以来か……。監督と選手の関係でともにプレーした中嶋聡監督、最後まで戦い抜いた選手たち、そしてリーグ連覇を果たして日本シリーズを戦ったヤクルトにも拍手を送りたい。

 第3戦だけ、ヤクルトが7-1で勝利したが、それ以外はほぼクロスゲーム。終盤までどうなるかわからなかった。もちろん勝利の分岐点は後から考えればいくつか挙げられるが、オリックスは大黒柱の山本由伸投手が第1戦で左脇腹を痛め、すぐに戦い方の整理ができたのではないか。「4勝」をもぎとるには、ストロングポイントである「救援陣」でどうイニングをつなぐか。好投している先発投手も中4日で回すなどのことを考えたら、スパッと代え、「救援陣」を押し出した戦いにシフトできた。それに応えた救援陣。特に23歳の宇田川優希、24歳の山崎颯一郎、そして抑えを務めたワゲスパックも11月5日で29歳になったばかり。わかっていても空振りやファウルにできる速球が3人にあった。

 投手なら155キロを上回る投手が何人もいる。大黒柱といえる主軸がいて、若い打者がいる。今回の日本シリーズを見て思うのは、「ベテランの経験値」など吹き飛ばすほどの「若いパワー」を感じたことだ。

 ここ10年で投手の平均球速は飛躍的に上がった。150キロ以上投げる投手はリーグでも数人しかいなかったが、今は違う。勝利の方程式に入る救援投手は155キロが当たり前となった。こうなるとベテランは厳しい。力が落ちてきた中で155キロを打ち返せないと勝負にならないといった状況が生まれた。いずれにしろ、「ミートがうまい」「制球力がある」といったものは、パワーがあることが前提となる時代となった。

次のページ