481社の創業にたずさわったという渋沢栄一(渋沢栄一記念館提供)
481社の創業にたずさわったという渋沢栄一(渋沢栄一記念館提供)
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 NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。渋沢家五代目の渋沢健氏が衝撃を受けたご先祖様の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。 

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 先週の11月11日は渋沢栄一の命日でした。没90年になります。渋沢栄一が150年ぐらい前に提唱した日本の資本主義の原点である「合本主義」とは、本コラムでもご紹介しましたが、一滴一滴が大河になるといこと、つまり、民間力集合による変革です。

 大正5年(1916)に出版された渋沢栄一の講演集の「論語と算盤」は、当時の日本社会への憂いそのものでもあり、栄一は民間力再編による変革を求めていたのです。変革なきでは、日本は悔やむ将来へと漂流してしまうと栄一は懸念しました。

 栄一が亡くなった1931年の二か月前に満州事変が起こりました。当時の日本人は、渋沢栄一の警告に耳を貸さなかったようです。

 岸田総理大臣は10月に就任された直後に「新しい資本主義」の会議を立ち上げられました。その有識者メンバーに任命された私は、もちろん渋沢栄一の生まれ変わりでなはく、跡継ぎでもありません。単に数多い、栄一の子孫の一人であります。ただ、令和日本の国が目指すべき方向性を定める場に、渋沢栄一の思想の現代意義の私の解釈を直接お届けできる機会をいただけたことは大変光栄です。「新しい資本主義」のあるべき本質は、日本に導入された資本主義と同様に、社会変革だと思います。

 現在は日本の近代史上、重要な時代の節目だと私は考えています。人口動態の激変により、今までの日本社会が体験したことのない規模感とスピード感で世代交代が始まっているのです。今までの成功体験を作ってきた世代から、これからの新しい成功体験をつくらなければならない世代へのバトンタッチです。

 この重要なタイミングで、「新しい資本主義」を実現する会議を設置された岸田総理のご決断に敬意を表します。有識者メンバーの構成は15名で、経済団体や労働組合の重鎮だけではなく、ジェンダー、年齢、専門分野の側面でダイバーシティが多彩多様の精鋭です。それぞれの立場や視点が異なることから、「新しい資本主義」のあるべき姿の議論が活発に行われることを期待しています。

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岸田総理の「新しい資本主義」の核心