とつとつはコロナ下でも、リモートで続いている。砂連尾は、認知症の人を「時間という概念にとらわれずに生きている」と捉える。
「動き、表情、たたずまいのすべてから、長い人生で堆積してきたものを感じます。生きているって素敵だなあ、と僕も幸せな気持ちになれる」
砂連尾の振り付けやダンスは、ジャンルとしては、コンテンポラリーダンスに含まれる。
7月に東京・門前仲町で開かれた「LAND FES DIVERSITY 深川」。「歩く」をテーマに数時間で一般の人とダンスを創る。参加者たちは中身が半分入ったペットボトルを頭に載せて歩き、続いて、蛇、蛇が食べたバッタ、相撲の四股、酔っ払い、鳥、電車、傘お化け、自動ドアになって歩く。本来の「歩く」から遠いものばかり。バッタ歩きはアイヌ民族の踊りだ。
兵庫県伊丹市で7月に行われた小学生向けのワークショップでは、わずかに離れた手と手に後方からライトを当て、スクリーンに映し出した。タッチしているかのような影絵が浮かぶ。5年生の女の子は「学校では友だちにさわれないけど、今日は心がふれてるって思った」と話した。
東京・立川の「まんまる助産院」の妊婦向けプログラム。砂連尾は、両手で妊婦のおなかを包み込む。相手の体の変化を感じたら離す。妊婦同士も触り合う。11月に参加した30代の女性たちは、相手に触れられたとき、一緒に支えてくれるような温かさを感じたという。砂連尾は言う。
「相手のおなかの子に気持ちを伝えることは、取りも直さず自分の子に気持ちを伝えることです」
俯瞰(ふかん)的に眺めると、一本の幹が砂連尾のダンスを貫いている。「つなぐ」。その場にいる人同士はもちろん、いる人といない人、人と人以外も。同時に、人が潜在的に持つ力を「引き出す」。
(文・中村智志)
※記事の続きはAERA 2021年11月22日号でご覧いただけます