性や子育ての疑問を気軽に話せる相談先として、助産師が注目されている。助産師が病院以外でも、女性や家族の身近にいる社会を目指し、活動している岸畑聖月さんに、助産師の役割や性教育について聞いた。AERA 2023年1月30日号の記事を紹介する。
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14歳の時、将来妊娠が難しいと宣告を受けました。婦人科系の疾患によるもので、中学生の私はとてもショックを受けました。
同じ頃、身近なところで、母親によるネグレクト(養育放棄)がありました。周囲は母親だけを責めていましたが、その女性は命を産むというすごいことをしてきたわけです。産むことができないと宣告を受けたばかりの私は、なぜ母親だけが責められるのか、その人を助けるとしたら、どのタイミングで誰が何をできるのかと考え、将来は命を産み育てるサポートをしたいと思うようになりました。
助産師を選んだのは、女性や家族に一番近いところで関わることができるから。臨床現場では出産だけでなく、流産や中絶、死産など、生まれてくることのできなかった命や、産むことのできなかった女性たちにも日々接しています。でも、病院という限られた場所だけでは、産前産後の女性に本当の意味で寄り添えない。助産師は激務であり離職率も高く、たとえ助産院を開業しても収益化が難しいため、病院でアルバイトをせざるを得ない人も多くいます。
現代社会に必要なスキルと経験を持った助産師を生かす仕組みを構築しようと、2019年、「With Midwife」を創業しました。
かつて自宅出産が主流だった時代は、助産師は性のことや子育てで困った時に気軽に、継続的に頼ることができる存在でした。その関係性は今こそ、必要だと感じていて、昔のように助産師が身近にいる社会を作りたいと活動しています。
そのひとつとして、企業の「顧問助産師」を推進する事業をしています。20~30代のキャリア形成や男性不妊、子育てなど幅広い相談が社内から届きます。助産師だからこそ気づける背景やかけられる言葉があり、組織の中にいる意義を感じています。