イラスト:唐橋充
イラスト:唐橋充

 掴みの殺陣からアクロバティックで本格的。出演者の方々はみな、東映の養成所で訓練を受けて、ドラマや映画で斬られ役もこなすプロの役者さんたちだと思う。だから迫力がすごい。

 アクロバティックな動きやキレ、刀捌きはもちろんのこと、私がしびれたのはかかりに行く瞬間の声の迫力。そして切られてからはけるまでの「ため」。これは東映ならではに違いない。

 斬られる瞬間のキレキレのリアクションから、ぐっと、ためて静止する間を作ってしっかりと存在感を残して去って行く。この「ため」の美学。

「いよっ!!」と声をあげて拍手したくなる。

 あっという間の15分、ずっと目をキラキラさせて見ていた我が子が、終わってから急に悲しそうな顔になり「おもしろくなかった……」と言うので驚いた。

 あんなに楽しそうに見ていたのにどうしたのか、と聞くと、「まけちゃったから……」と言う。

 どうやら最初に登場して客席に話しかけてくれるお侍さん二人が「狐のお面を被った忍者は悪者だ」と説明してくれたので、そのお侍さんたちが狐の忍者をやっつけるのを期待したようなのだ。劇の中で展開があって、最後はめでたしめでたしのお話になっているのだが、時代劇の言葉は4歳児には難しかったようだ。

 そして、最初に話しかけていたお侍さん二人が陽気で楽しかったので大好きになったのだ。なるほどなあ、と思った。

 その後もアトラクションを巡り、閉村時間の17時まで、めいっぱい楽しんで1日を過ごすことができた。

 大人も子供も「非日常」を楽しめる場所。

 だけどそこには、過去には「日常」であったであろうリアルがちょっとある。

 これが映画村ならではの味わいだよなあ、と思った。

■水野美紀(みずのみき)
俳優。ドラマ・映画・舞台で活躍中。<出演情報>Amazonプライムビデオ「ザ・マスクド・シンガー」が配信中。作・演出・出演した舞台『2つの「ヒ」キゲキ』のDVDの予約を10/31まで受付中(https://2hikigeki.official.ec)。レギュラー番組は、フジテレビ系バラエティ「突然ですが占ってもいいですか?」毎週水曜22:00~、読売テレビ「水野美紀の映画生活(シネマライフ)」毎週金曜22:54~<関西ローカル> http://www.ytv.co.jp/cinemalife/

【書籍『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』好評発売中】

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