(c)2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved
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 3年前に他界した、米国が誇るシンガー、アレサ・フランクリンの伝記映画「リスペクト」が公開中だ。アクティビストとしても大きな足跡を残したアレサを演じたジェニファー・ハドソンに、本作にかけた思いを聞いた。

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 アレサは1942年、テネシー州で牧師家庭に生まれた。10歳で母を失い、12歳で母となり、ほどなくしてレコードデビュー、20代で世界的な成功を収めた。この映画は、才能に恵まれながらも多難な人生を歩まざるをえなかったアレサの人生をひもとく。

 人種差別が当たり前の時代。家族からの拘束や軋轢(あつれき)を抱えていた彼女が、信仰と音楽で道を切り開いていく過程を、ヒット曲誕生の逸話を織り込みながら追っている。

 アレサを演じるのは、ジェニファー・ハドソン。オーディション番組で脚光を浴び、映画「ドリームガールズ」では名演でアカデミー賞助演女優賞を受賞。シンガーとしてグラミー賞も獲得した。成功の陰で、家族を失う不幸を体験、それを克服し本作に挑んだ。

──アレサからこの役にあなたが決まったと伝えられた時のことを覚えていますか?

「忘れられないわ。私が『カラー・パープル』の舞台をやっていたときのことで、彼女から電話がかかってきた。『遂に誰が演じるか決断したの。あなたに演じてもらいたい。でも誰にも言わないで』と言われた。後日プレスに向けて、アレサ役が発表されたの。そのときに正式に私が演じるんだ、真実なんだと初めて感じた。それまでは二人だけの秘密だったわけだから」

──アレサ本人と知り合ったことで、逆に演じることが難しくなったというようなことは?

「それはあったわ。彼女が抜擢してくれたことで感激もひとしおだった。同時に、プレッシャーもずっと大きくなった。また自分で演じてみたいと思った役だから興奮もした。さまざまな気持ちが混じり合った複雑な気持ちだったの」

──アレサの音楽との出会いはいつ?

「子供のころから歌を聞いて育った。例えば『アメイジング・グレイス』や『プレシャス・メモリーズ』など、いつも教会で歌っていたけれど、子供だったのでどのアルバムに収められた曲なのかなどは知らなかった。気が付かないうちに彼女の曲が私の人生を追いかけてきたというのかしら。今回彼女の曲を歌うことで、幼いころの記憶がよみがえってきた。潜在意識の中にあった彼女からの影響を発見することになった」

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