中村紀洋と言えばこのフルスイング
中村紀洋と言えばこのフルスイング

 中村コーチの現役時代の実績は文句なしだ。日本では近鉄、オリックス中日楽天、DeNA、メジャーではドジャースと日米6球団でプレー。NPBでは通算22年間で2101安打、404本塁打、1348打点をマーク。98年からは5年連続30本塁打以上を放ち、00年は39本塁打、110打点で二冠王、01年は46本塁打、132打点で2年連続の打点王に輝いた。04年アテネ五輪では日本代表として出場して銅メダル獲得に貢献。代名詞のフルスイングは野球ファンなら誰もが知る球史に残る強打者だった。

「近鉄時代のインパクトは強烈だった。調子に乗ると固め打ちをして手がつけられなくなる。フルスイングが売りの長距離打者のイメージが強かったが、リストの使い方が柔らかく広角に打つ器用さもあった。松坂大輔(西武)、黒木知宏(ロッテ)など各球団エースとの真っ向勝負は見るものを熱くさせた」(当時の近鉄担当記者)

 現役時代から重要視していたのは打撃と守備はつながっているという考え。試合前の練習では個人ノックを受けるのが定番の風景。ウォーミングアップ程度ではなく左右に打ち分けられた打球を追いかけ巧みに捌いていた。スイングに好影響を及ぼし身体のキレも生み出す一石二鳥の練習方法だった。

「守備練習がバットスイングに大きな影響を及ぼすと考えショートの守備位置で入念にノックを受けていた。自分を知り確固たる打撃理論を持っていれば崩れにくく修正しやすい。継続して結果を残せた理由がわかります。そういった部分を中日の選手にも大事にして欲しいのではないでしょうか。ちなみにショートのポジションで受ける内野守備は本職よりも上手いほどだった」(近鉄時代から知るスポーツライター)

 14年ぶりとなる中日のユニフォームに袖を通し秋季キャンプ初日から精力的に指導している。コーチ打診時に球団から育成を頼まれた中軸候補の石川昂弥、期待されながらもなかなかレギュラー奪取に至らない根尾昂、一軍試合出場を重ねさらなる飛躍が望まれる岡林勇希、そして球界トップクラスの遊撃守備を誇るが打撃が課題の京田陽太など、伸びしろの多い有望株も多いだけに中村コーチにかかる期待は大きい。

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