虚空とは仏教でいうところの一切の事物を包容してその存在を妨げない偉大な空間です。私は、人はこの虚空からやってきて、死んだらこの虚空に帰るのだと考えています。この虚空と生きながらにして一体となるとはどういうことなのでしょうか。それは生と死を超越するということでしょう。生きていることと、死んでいることの区別がなくなってしまう境地のことを指しているのだと思うのです。
あるいは、本来、人は虚空が生まれたときに生まれ、虚空がなくなるまでなくならない、そういう存在であることに気づけということかもしれません。
「時空」は六つのパートから構成されています。
(1)予備功=経絡を伸びのびさせる(2)天の気、地の気を取り入れ、全身になじませる(3)4億年前の波打ち際のリズムを思い出す(4)「智能功」の「捧気貫頂」により虚空と交流する(5)「智能功」の「三心併站功」を行い、手の中に宇宙を抱くイメージにより虚空と一体になる感じをつかむ(6)収功=整理体操。
虚空に手を届かせるために、この「時空」に励んでいただけたらうれしいです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年11月26日号