だが、その考えに同調する意見は日本国内では少なかった。「コンディションが万全なら大谷は二刀流で必ず成功する」と信じていたからだろう。

 米国でも懐疑的な見方はすぐに消えた。今年4月4日のホワイトソックス戦で指名打者を解除し、大リーグ移籍後初となる「2番・投手」で先発出場。打者として初回に先制の2号アーチを放つと、投げては球速163キロを計測。5回途中3失点で負傷降板して白星はつかなかったが、投打で見せたそのパフォーマンスは衝撃的だった。

 周知のとおり、その後は本塁打を量産し、投球も後半戦に入ると制球力を重視した投球にシフトチェンジ。抜群の安定感でチームトップの9勝(2敗)を挙げた。

 大谷は11月15日に東京都内の記者クラブで開かれた記者会見で好成績の要因を聞かれ、

「一番はフィジカルがしっかりしていたところですかね。技術ではないですけど、そこが技術に一番結びつくところなので、基本的にはしっかりしたフィジカルがあることによって、できる動きが増えてくるっていうところでいうと、一番はフィジカルになってしまうかと思います」

 と振り返っている。

 打って、走って、投げて――。心技体がかみ合えば、異次元のパフォーマンスを見せられることを証明した。

 そして、これだけの驚異的な数字を残しても、大谷は伸びしろだらけだ。

 前半戦84試合で33本塁打をマークしたが、後半戦は71試合で13本塁打とペースが大きく落ちた。大リーグ最強打者と形容されるトラウト、19年の打点王アンソニー・レンドン(31)の強打者が故障で戦線離脱したことで、大谷は勝負を避けられることが増えた。申告敬遠20はリーグ最多。ただ、トラウト、レンドンがスタメンで名を連ねれば、相手バッテリーも大谷に対してストライクゾーンで勝負せざるを得ない。さらなる本塁打量産は十分に可能だ。

 投球も18年10月に右肘靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受け、まだまだ回復過程にもかかわらず、球速、制球力、変化球の精度と大リーグトップレベルのクオリティーを見せた。

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