だれのための支援か

 家計簿・家計管理アドバイザーのあきさんは「児童手当の所得制限の算定基準が不公平」と指摘する。昨年12月10日、政府・与党は中学生以下の子どもを対象とした児童手当のうち、高所得者向けの「特例給付」について、年収1200万円以上の世帯は廃止することで合意。だが、所得制限の算定基準については、夫婦の収入を合算する方式の導入を見送り、所得の高い方のみの年収で判断する現行方式の続行となった。

 男女共同参画白書(2021年版)によると、共働き世帯はこの40年、年々増加。1997年以降は共働き世帯数が専業主婦の世帯数を上回る。20年では、共働き1240万世帯に対し、専業主婦世帯数は571万世帯。児童手当ができた70年代の「夫が働き、妻は専業主婦か、働いても年収100万円以下が当たり前」という状況なら世帯主の年収で所得制限をかける方法でも問題なかっただろう。

 しかし今は女性で正社員として働く人も多く、「年収の多い方」で所得制限をかけるのは時代に即していないと言える。

「合算方式を見送った時点で、児童手当の所得制限の条件がおかしいと感じている。もともと不公平な児童手当の条件を当てはめるから、『だれ支援?』となるのでは」(あきさん)

 第一生命経済研究所首席エコノミストの野英生さんは「迅速な支給のために児童手当のルールを使うしかないなら、960万円未満というのは高すぎます。世帯収入の全国平均は約550万円なので、600万円ほどが妥当だったのでは」。

 さらに、「なぜ迅速にやる必要があるのでしょうか? 公明党の政策を丸のみするのではなく、世帯年収で所得制限をかけるなど、新しいルール作りをするべきだったのではないでしょうか」と話す。

 時代に即していないモデル家庭は見直す時期にきている。(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年11月29日号

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