いやー運動なんか無理ムリ、だって寝てないもん、フラフラだもん、子どもを抱き上げるだけでスクワットやってるようなもんだもん!なんて精神状態に、特に産後すぐは陥っていましたが、産後すぐで余裕がないからこそ、家の外に出て体を動かし、気持ちを晴らす必要があるのだとやってみて感じました。運動は、日々生き延びていくための必需品でした。

 生活必需品だからこそ、アメリカのジム会員費は決して高額ではありませんでした。私が通っていたジムは、大人2名+22歳未満の子どもたち(人数制限なし)の会員費が月75ドル。1家族75ドルって、この円安でも1万1千円くらいですから日本のジム会員費に比べたら割安ではないでしょうか。他にもアメリカには、ジム会員費を福利厚生費として勤め先に申請できたり、ジムによっては低所得者層向けの割引や補助制度があったりして、決して運動をひと握りの人々だけのぜいたく品にしない姿勢を感じました。

 対して日本には「スポーツジムは特別な場所」という意識がある気がしてなりません。日本で子持ちでも行けるジムを探そうとすると、選択肢は主に次の3つに分かれます。ひとつ目は専属のパーソナルトレーナーが指導してくれるような高級&本格派ジム。ジム内にキッズスペースがあるということですが、入会金や会員費が高すぎるし、モデルやアスリートのように体を絞りたいわけではないので私は却下。ふたつ目は子どもをどこかの託児所に預け、その費用をジムが一部/全額負担するシステム。一時預かりしてくれる施設を探すだけでも大変だし、送迎の手間もかかるので却下。3つ目は、子どもと同じ部屋で運動できることを謳う完全個室ジムや子連れ型レッスン。子どもを横目で見ながら運動に集中できるわけがなく、精神的余裕が得られることもないので却下。

 というわけで現在私は、夫が子どもを見てくれている間に近所のジムへ通っています。自分が好きな時間帯に行けないのがストレスですが、通えるだけでもよしとしなければ。なにしろジムでは、自分のような主婦世代はひとりも見かけないのです。見かけるのは、運動部所属風の大学生か、筋肉ムキムキのアスリート風男性、そして運動不足解消に勤しむシニア世代。同じ時間帯に、たとえば公園やショッピングモールへ行けば主婦風女性は大勢いるのですが。

 小さい子どもがいる親にだって、ジム通いは必要です。体作りだけでなく心の安定のためにも、子どもと離れて運動することが不可欠なのです。ダイエットや肉体改造ではなく気軽にダンベル運動しに行けるような託児所付きのジムが、日本でももっとできるといいのに。人任せで申し訳ないですが、どなたか作ってくれませんか?

〇大井美紗子(おおい・みさこ)
ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

大井美紗子の記事一覧はこちら