今季GP1戦目のイタリア大会では、武器である筈のスピンの不調に苦しみ6位。しかし、海外にもファンが多い友野は、エキシビションに招待された。
この春、同志社大学を卒業したばかり。社会人になった同級生を思って自ら振り付けた今季のエキシビションは、スーツにネクタイという姿で踊る「Bills」。ブリーフケースを手に踊った“イタリア出張版”は、観客の戻った会場を大いに盛り上げた。タッグを組む振付師のミーシャ・ジー氏同様、エキシビションになくてはならない存在だが、今回のロシア大会で、競技者としての実力も世に大きく示したことになる。
28日には、招待ではなく堂々のメダリストとして、“ロシア出張版”を舞う予定だ。
朗らかなキャラクターで、チームジャパンのムードメーカーとしての存在感も大きい。明治大学と法政大学の学生が企画した手作りのアイスショーでは、同期生のために飛び入りでもぎり役を買って出た。コロナ禍でのオンライントークショーでも、人望とトークスキルを活かして大活躍。銅メダル獲得後には、鍵山優真や横井ゆは菜ら後輩選手が、SNSを通じてすぐさま健闘を称賛した。
ラーメンとサウナが大好きな23歳。試合後のインタビューでは、
「メダルを取れてうれしいけど、前回と違って表彰台に乗れて悔しい気持ちがあるのがビックリ」
と、銅メダルにも自己ベストにも甘んじない強さを見せた。表彰台で手に入れた自信と、フリープログラムで思い通りの演技が出来なかった悔しさと。双方を胸に向かう次戦は、北京五輪に繋がる全日本選手権だ。
一躍代表に名乗りを上げた友野一希の、全日本での活躍に注目したい。
(菱守葵)
※週刊朝日オンライン限定記事