11月27日、グランプリシリーズロシア大会・男子フリーで演技をする友野一希
11月27日、グランプリシリーズロシア大会・男子フリーで演技をする友野一希
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 フィギュアスケートのグランプリシリーズ最終戦、ロシア大会。羽生結弦不在の大会で、友野一希が躍進した。11月27日に行われたフリーの演技を終え、自己ベストを大きく更新して総合3位で表彰台に上った。試合前のランキングでは、参加12選手中7番目という位置付けだったが、大健闘の銅メダル獲得だ。

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 ショートプログラムでは、4回転2本を含むすべてのジャンプを加点付きで着氷。スピン・ステップの要素全てでも最高のレベル4を獲得して、首位に立った。

 迎えたフリーは、最終滑走。冒頭の4回転3回転コンビネーションジャンプは加点つきで着氷するものの、ジャンプで綻びが出て順位を下げる。しかし、スピン・ステップではショートと同様にすべての要素をレベル4で揃え、表彰台を死守した。

 SPの後の記者会見では、「フリーは誰よりも練習した自信がある」と語った友野。その成果が如実に出たのが、スピンのスコアだ。数あるエレメンツ(実施要素)の中でも、スピンほど地道な練習量が目に見えるものはない。今大会では、GOE(出来栄え点)を含めて、合計23点以上を稼ぎ出した。

 フリーの「ラ・ラ・ランド」では4回転ジャンプを2種類3本演技構成に入れているが、ジャンプが崩れた時にもスピンのレベルを保つことが出来るのが、本来の友野の強み。スピード感のある正確なスピンでプログラムの流れを取り戻し、全身をフルに使って舞うドラマチックなコレオシークエンスで締めくくる。

 今大会でも、他国選手に手厳しい事で知られるロシアの観客が、熱狂的と言っていいほどの歓声を挙げて友野のコレオシークエンスを称賛した。加点1.86は、ショート4位からごぼう抜きでフリートップのミハル・コリャダの1.36を大きく上回って、全選手中トップ。

 160センチと小柄な身体だが、観客との一体感を醸成する能力には定評がある。ただ楽曲の物語をなぞるだけではない。伸びやかなスケーティングと躍動感あふれるステップで、彼の世界の中に一気に観客を惹き込んでいく。ついたあだ名が、「浪花のエンターテイナー」。

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“サラリーマン”姿で舞うエキシビジョンの理由