担当者によると、コロナ禍でも目的を絞り、コアなファンが喜ぶ企画は堅調だ。
「例えば、SL用の客車で普段はない秩父鉄道の夜行の旅を楽しむ『三峰53号の旅』(大人1万2500円~)、D51-200の運行準備を見学したうえでSLやまぐち号を満喫する『クリスマス号』はすぐに満席になりました。今後もコアな企画を用意していますので、ホームページで確認してほしい」
◆行き先わからずワクワク感演出
苦境の観光業界で、アイデアで人気を博した代表格は格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションが展開する“旅ガチャ”(正式名称は「旅くじ」)だろう。1回5千円で、購入したカプセルを開けると、ピーチが運航するどこかの路線が指示され、5千円以上のチケット購入ポイントが旅先でのミッションとともに出てくる。
現在は東京・渋谷、大阪・心斎橋、名古屋のパルコに設置されており、11月23日現在で累計9400個が販売された。
「お客様にワクワク感をお届けしたいという気持ちで開発した商品です。行き先がわからない旅くじをきっかけに、これまで訪れたことのない地域を訪れていただくことで、お客様自身に新しい発見をしていただくとともに、地域にも新しい需要の創出ができると考えております」(ピーチ・アビエーション広報室)
ネットでは10代の若者が「初めての一人旅は旅ガチャで当てた石垣島。ミッションで書かれていたハンサムな石垣牛にも会えました」など、一人旅を楽しんだという報告が多くみられる。団体ではなく一人旅なら大丈夫では?というコロナ禍ならではの心理とマッチした企画だったといえる。
コロナ禍の旅は「安心」がキーワードのようだ。(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2021年12月10日号