空港検疫で使われている検査機器と検査キットは富士レビオ(本社:東京都)の「ルミパルス」という製品だ。医薬品の審査などを担う厚生労働省の独立行政法人・医薬品医療機器総合機構が公表している資料を見ると、PCRでは24件を陽性と判定したところをルミパレスの試薬では22件を陽性、2件を陰性とした。また、PCRでは301件を陰性と判定したところを、この試薬は陰性を293件、陽性を8件と判定している。判定が不一致となったのは全て回復期の検体だった。
政府は「同等の感度」と評価しており、専門家のなかでも「PCR検査ができるなら越したことはないが、抗原定量検査の精度は十分に高い」という声もある。しかし、川上教授はこう指摘する。
「国立感染症研究所が出した研究結果でも、PCRのほうが約1千倍感度が高いという結果です。ウイルス保有量が検出限界以下の感染者を見逃す可能性があることを指摘しています。いずれにしろ、感染しているのに陰性となる『偽陰性』、感染していないのに陽性となる『偽陽性』が出てくる懸念があるということです。海外からのオミクロンのような変異株の侵入を阻止するには、PCRがより適切です」
さらにPCR検査の現場への負担については、川上教授は「PCR検査は唾液でもできるし、結果が出るまで50分~1時間」という。試薬製造大手のタカラバイオの担当者も「負担は大きくない」とし、次のように説明する。
「従来のPCR検査はサンプルの前処理だけで1時間かかっていたが、当社の検査キットでは10分以内でできるようになった。検査結果は1時間以内に出ます。また、唾液を採取するだけで検査ができるため、スタッフの感染リスクも大幅に抑えられています。製品の価格は1回あたり約1千円と安いのも特徴です」(担当者)
医療現場でPCR検査を扱う専門家はどう見るか。新型コロナ患者の診療を行っているインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長は「空港検疫でPCR検査は可能だ」と主張する。倉持氏のクリニックではPCR検査機器が8台あり、フル稼働させれば1日6千人分の検査はできるという。